エンジン左側から異音がするので弊社で点検することになりました。
合わせて全体のダメ出しも。

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タンクのコック付近からはガソリン漏れの痕が。
一番高いところはタンクとコックの合わせ目ではなく、
取り付けボルトのところです。ボルト座面にガスケットが入っていないようです。

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コックを外してみるとタンクの取り付け面はきれいです。

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Oリングも問題無し。

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コックを洗浄して点検したところ、特に外観は異常無し。
ボルト座面に正規のガスケットを入れて組み直します。

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これで漏れが止まれば、ガスケットの入れ忘れということでしょう。
しばらく様子をみてみます。

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エンジン異音の場所はジェネレーターの辺りです。
アイドリング時のみカタカタ音がするので、
スタータークラッチに不具合がありそうなので分解してみます。

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もともとは丸タンクのJ1のようで、
タンクマウントのピンは短くカットされていました。
マウントダンパーは劣化しているので要交換。

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フレームに巻いてあるダンパーも劣化が酷いので要交換。
これに限らず、ラバー類は全般的に劣化が進んでいます。

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シートのダンパーも劣化が酷く、
硬化していると前後に滑ってシートが動いてしまうので要新品交換。

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ラバー類は純正部品があるうちに、全部交換をお勧めします。

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キャブホルダーもクラックがあるので交換します。

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ブリーザーホースは曲がりのきついところで折れ曲がっています。
このタイプのホースは耐熱性が弱いので、
高温環境だと柔らかくなって曲げ部分から折れて潰れます。
内部にコイルをいれるなど潰れ対策が必須です。
ブローバイガス圧が高くなり過ぎると、オイル漏れやオイルシールの抜けなど、
不測の事態もあるのでご注意を。

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S1スイングアームのキャッチタンク側も曲がりで潰れています。
ここは曲げRがきついので、バッテリーケースを上に移動してスペースを開けるか、
曲げ加工されたホースの使用をお勧めします。

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キャブホルダーを外したら、取り付け面はオイルストーンで面出しします。

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イグニッションコイルの接続が緩いので抜いてみたら挿入深さが浅かったようです。

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本来、金具は奥まで全部入ります。

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コイル側の金属端子は奥の方にしかないので、
完全に押し込むように取り付けるのが正解です。
4ヶ所全て修正しておきました。

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スプロケカバーを外します。
チェンジリンクの前側ロッドエンドは緩んでいます。

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ボタンヘッドのボルトを使っているため、
分解しないと締め付けできない構造でした。

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リンクを外します。

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スプロケカバーを外して、ステーターコイルの接続を分離します。

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クラッチレリーズレバーのインナーケーブル受けにクラックがありました。
J1のこのレリーズは生産終了です。
新品交換する場合は、
スプロケカバーごと後期タイプのレリーズに交換するしかありません。

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ジェネレーターカバーを外します。
ジェネレーターローターは最近の物に変更されているようです。

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ステーターコイルは熱でだいぶ劣化しているようです。
今のところ三相各相の抵抗値は異常ありませんが、
早めの交換をお勧めします。

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ジェネレーターローターの締め付けトルクを確認します。

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少し締まるので、緩んだかトルクが不足していたようです。

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ジェネレーターローターの交換歴があるということで、
異音の原因としてスタータークラッチが怪しくなってきました。
手で回してみると案の定緩んでいるようです。
その動画はこちら。本来はローターと一体化されているはず。
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ローターを外します。

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クランクのテーパーは綺麗です。ローターの空回りは無かったようです。

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スタータークラッチの取り付けボルトは3本とも緩んでいます。

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その動画はこちら。
このまま乗り続けるとボルトが破断したりネジヤマを破損することがあります。
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スタータークラッチを分解します。

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ボルトは繰り返しせん断力を受けてネジ山が潰れています。
このボルト、正規の締め付けトルクはM8にして4kg・mと強力なのでご注意を。

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幸い、ローター側のネジ山は無事でした。

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スターターギヤにもだいぶ損傷があります。

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ワンウェイのローラーによる圧痕がだいぶついてきています。
まだ始動はできますが、このままどんどん悪化していくのでこの際新品交換を。

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1000Rの純正オイルクーラーは、ブラケット無しでバンド止めだけのようです。

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ゴムのバンドは破断寸前、ゴムバンドは消耗品とお考えください。
1000Rの純正ブラケットの使用が無難です。
